高間堤の河童

高間堤の河童・第3回(平成10年2月掲載)

河童と男性が向かい合っている高間堤の河童のモノクロのイラスト

 もう昔の話になりますが旧暦の三月三日には、高間堤(甘黍堤)の付近は人通りがとだえました。それにはこんな理由があったのです。
 むかし、とある若者が節句酒にしこたま酔ってこの堤にさしかかった時のことです。
 その若者の前に突然、一人の皿をかぶった血塗れの小童(こわっぱ)が立ちはだかり、「俺に勝ったなら通す。負けたら行くことならん」と言いながら、両手を広げて行く手を遮り、相撲を挑みました。
 力には日ごろから自慢の若者です。難なくその小童を投げ飛ばしたところ、また別の小童が現われて行く手を遮ります。その小童も右から左へと投げ飛ばすと、また次が現われます。
 このようにして後からあとから新手が現われて出て、都合十七、八人の小童がわめき廻っては相撲を挑んできました。
 そこで若者も本気になり、手に唾して身構えながら、「さあ、どこからでもかかって来い」と大声を上げたところ、不思議なことに小童たちは一目散に逃げ去っていきました。
 そんなことがあって以来、桃の節句の日に酒に酔って堤の付近を通ると、皿をかぶった小童(河童)が現れて相撲をせがむので、その日には誰からとはなく、通るのを避けるようになったのです。

解説

 河童と言えば、近くでは浮羽郡が有名です。河童話にはこと欠かず、河童の手と称するものまで残っています。私たちの地域でも春には「河童に引かれんごと」と、飾り竹を立てて願う川祭りの行事が続いています。ところが河童話は、とんと聞かれません。
 八女地方には河童伝承や河童譚と言ったものは、本当にないのかと言えば、そうではありません。筆者は長い年月をかけて丹念に聞き取り調査を行い、八女市・立花町・広川町・星野村で河童話を採録することができました。今では聞くこともなくなった河童話も、戦前まではたくさん語られていたようです。高間堤の河童もそうですが、八女地方の河童話には必ずと言ってよく相撲が出てきます。
 それと"唾をつけて身構えると逃げる"と言う筋書きも共通しています。「河童に出合ったら、手に唾をつけて身構えるとよい」、「河童に人間の唾がつくと溶け出す」と言った話へと発展していきます。

広川町郷土史研究会

  •  文・岳野 住人
  •  画・梅本 光男

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