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角蔵が雪隠な松川原(まつごうら)

更新日:2005年7月1日このページを印刷する

 角蔵が雪隠な松川原(まつごうら)●第5回(98年4月掲載)

 

角蔵が雪隠な松川原(まつごうら)

 一條村の長者殿の屋敷で働く者の中に、角蔵という名の一人の男がいました。この男は何と言っても、その足の速さが評判でした。その証拠の一つに、例えば六尺フンドシのひもを頭に結びつけて走りますと、その長いフンドシは一直線になびき、少々スピードが落ちてきても決して、地面にこすれるようなことはなかったと言います。
 そんなことから毎日の用足しは、自慢の足の運動も兼ねて村はずれの、松川原(まつごうら)の竹薮まで通っていましたので、村の衆はいつからともなく愛称をこめて足の速いたとえに、「角蔵が雪隠な松川原(まつごうら)」と言うようになりました。
 さてこの男は、なかなかの渋膽丸(じゅうたんがん)でも知られておりました。ある日のこと長者殿の言いつけで、久留米まで肥くみに行くことになりました。
 久留米までは二里なので、ほどなく着きましたが、どうしたことか自分自身がなにやらもようしてきたではありませんか。角蔵は「さてどうしたものか」と思案のあげく、「せっかく肥をくみに来たのだから、ここで用足しするのはもったいない」と、自慢の足でひと走りです。一條までもどって用を足してすっきりしたところで、いま一度久留米までつっ走ったと言うのです。
 またある日のこと、田鋤きに使う縄(引き緒とか、みみず緒と言う)を、せっせとなっているのを見た長者殿は、「そげんあまか撚りじゃ、使いもんになるめだい」と言いました。そこが渋膽丸ならではです。「よし、そんならば!」と手に唾をつけて、せっせと撚りをかけて縄をない上げました。
 その日の晩のこと、土間の方でパチパチと異様な音がしています。長者殿が何ごとかと起きてみますとびっくり。何とその音は、角蔵どんがなった縄の撚りが解けてはじける音でしたのです。
 あんまり強く撚りがかかって使いものにならず、使えるようになるまで何日もかかったと言います。

 〈用語の説明〉
 雪隠 ・・・ 便所のこと。
 渋膽丸 ・・・ 偏屈者。
 引き緒 ・・・ 田を起耕する際に、牛馬と馬鍬とを連結するための縄みみず緒とも言う。
 なるめだい ・・・ ならないだろう。
 そんならば ・・・ それならば。
 肥くみ ・・・ 下肥(人糞)を集めること。

 広川町郷土史研究会

 文・岳野 住人 画・梅本 光男

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